穏やかに日々創想 (永岡ともよし別館)

 
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永岡ともよしです。昨日は泊まり勤務が明けてから一旦帰宅し、横浜の神奈川芸術劇場で『国民の映画』を観てきた私ですが、今日は前日と同じ電車を反対方向に乗って、日本橋浜町の明治座まで出掛けてきました。4月の明治座は早乙女太一さんが主演する『新説・天一坊騒動』と舞踊ショウです。お芝居の方は、もちろん太一さんがタイトルロールで、歴史の通り天一坊は首を晒される運命を辿るのですが、その過程で彼や同じく命を落とす周囲の人々が、鮮やかに描き出されて好印象を残しました。第2部と呼ぶには短い舞踊ショウでの女形の魅力は、私が宣伝するまでも無く既に十分有名ですよね。早乙女太一さんのファン以外に、OSKや宝塚など歌劇系の愛好者にもオススメで、是非1度試すべきだと思います。

別の作品を上演した2月の大阪・新歌舞伎座では、お芝居の相手役が安倍なつみさんでした。大阪では後半のショウにも参加して、ソロで歌う場面も用意されていましたが、今回の明治座ではお芝居で主要な役柄を演じた俳優さんは、『天一坊騒動』の幕が降りるまでの登場なのですね。一応ヒロインは佐藤めぐみさんで、太一さんより7歳ほど年長ながら実は妹という設定でした。TVで拝見して名前と顔は知っていても記憶に留まるものは殆ど無かったのですが、男性の観客に好まれそうな女性像を作って好演でした。2月の安倍さんも良かったですし、お芝居では年上の女性共演者に助けられる部分が大きいですね。

天一坊のお話なら欠かせないのが「父親」の八代将軍・吉宗です。この明治座公演では田中健さんが吉宗役を演じていて、病に倒れて精神が壊れてしまった姿での場面が大半を占めています。果たして田中さんクラスの俳優さんを起用する意味があるのか疑問に感じていたところ、物語を締め括る最後の台詞で存在の意味を十分に納得させてくれました。迎えに行くと約束しながら果たせずにいた息子との残酷な出会いに動揺しつつ、確かな心を取り戻して最後の願いを正面から受け止める弱さと大きさは、やはり経験を積んで観客にも認められた演じ手だからこそ、より強く説得力を持って伝わるのだと思います。

私は最近になって早乙女太一さんを見始めたばかりで、昨秋の『薄桜鬼』から新歌舞伎座、そして今回の明治座しか実際には観ていないのですが、この短い間でもお芝居の進歩は目覚しいと感じています。先ほども書いた通りに、まだまだ相手役の女性に頼る面が大きいのは間違い無いものの、それは時間と経験が解決してくれるでしょう。切れ味鋭い得意の立ち回り以外は、他の俳優さんにお願いしてお芝居を成り立たせている印象が徐々に薄らいで、日常を演じるシーンでも主役らしさが増して来ました。明治座は28日限りですが、5月には劇団朱雀との全国ツアーが始まりますし、太一さんの更なる成長が楽しみです。
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